「防火対象物点検」と「消防用設備等点検」は、建物の火災等に関わる点検なので、混乱してしまう方も多いでしょう。どちらも、人命の安全を確保するという目的は同じものの、根拠となる法律や点検内容などが異なります。
この記事では、防火設備定期検査と消防設備点検の違いを、目的や対象建築物などの項目に分けて解説します。建物を所有している方、担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
防火設備定期検査と消防設備点検の違い
防火設備定期検査と消防設備点検には、以下の項目において違いがあります。
- ・目的・関連法令
- ・対象建築物
- ・期間・頻度
- ・点検者
- ・検査・点検内容
- ・報告制度
それぞれ解説します。
目的・関連法令
防火設備定期検査と消防設備点検は、根拠となる法律が異なります。それぞれの検査が定められている法律は、以下のとおりです。
防火設備定期検査 | 消防設備点検 |
建築基準法 第12条第3項 | 消防法 17条3の3 |
検査の目的は、どちらも「建築物の安全性の確保」です。
しかし、防火設備定期検査は、火災の拡大や延焼を防止する、防火扉や耐火クロススクリーンが検査の対象となります。一方、消防設備点検は、初期消火や報知を行う消火器や火災報知器など、消火活動を支援する設備が対象です。
検査の内容が違うだけでなく、点検するのに必要な資格も変わるため、点検者も異なります。
対象建築物
防火設備定期検査と消防設備点検の対象建築物は、以下のとおりです。
防火設備定期検査 | 消防設備点検 |
【政令で指定された特定建築物】 1、不特定多数の者が利用する建築物 2、高齢者等の自力避難困難者が就寝用途で利用する施設 3、地域に応じて特定行政庁が定めた建築物 |
【消防法で定められた防火対象物】 1、延べ面積1,000m2以上の特定防火対象物 2、延べ面積1,000m2以上の非特定防火対象物 (※消防長または消防署長が指定したもの) 3、屋内階段(避難経路)が1つの特定防火対象物 |
劇場、映画館、飲食店、物品販売を営む店舗、病院、旅館、共同住宅、観覧上、公会堂、集会場、児童福祉施設、博物館、美術館、スポーツ練習場、百貨店など | 商業施設、飲食店、映画館、ホテル、百貨店、旅館、病院、駐車場、マンション、事務所、病院・福祉施設、工場、アパート、学校、図書館、倉庫など |
特定建築物として指定された建築物のうち、防火扉や防火シャッター、耐火クロススクリーンなどの防火設備が設置されている建物が、防火設備定期検査の対象です。
ただし、政令以外でも、地域の状況に応じて特定行政庁が検査の対象を指定する場合もあります。
建築物の所有者や管理者は、対象の建築物に該当するか確認しておきましょう。
消防設備点検では、消防法で定められた防火対象物が対象です。
防火対象物は、不特定多数の人が出入りする特定防火対象物と、利用目的が限られた非特定防火対象物に分けられます。
また、特定防火対象物のうち、2つ以上の直通階段が設けられていない建物の場合も消防設備点検の対象です。
期間・頻度
防火設備定期検査と消防設備点検の報告期間と頻度は、以下のとおりです。
防火設備定期検査 | 消防設備点検 |
1年に1回 | 機器点検:6ケ月に1回 総合点検:1年に1回 |
防火設備定期検査を行う頻度は、1年に1回とされています。
検査の期間は、前年の報告日の翌日から起算して、約6ケ月から1年の間隔をあけます。特定行政庁から通知が届いても、設置状況により対象外となる場合があるため、注意が必要です。
消防設備点検には、6ケ月に1回点検の機器点検と、1年に1回点検の総合点検があるため、1年に2回の点検が必要です。また、建物の関係者は、法令により点検を行った結果を「維持台帳」へ記録することが義務付けられています。
点検者
防火設備定期検査と消防設備点検の点検者は、以下のとおりです。
防火設備定期検査 | 消防設備点検 |
一級建築士、二級建築士、防火設備検査員 | 消防設備士、消防設備点検有資格者 |
防火設備定期検査における点検者は、一級建築士、二級建築士、防火設備検査員です。
対象の建築物を所有または管理する人は、必ず専門資格を持つ業者に委託して防火設備定期検査を実施しましょう。
一方、消防設備点検における点検者は、消防設備士または消防設備点検有資格者です。
場合によっては、自分で点検することも可能ですが、専門的な技術が必要なので、安全面をしっかり確保したい方は、有資格者に点検してもらうのがいいでしょう。
検査・点検内容
防火設備定期検査と消防設備点検の検査・点検内容は、以下のとおりです。
防火設備定期検査 | 消防設備点検 |
・防火扉 ・防火シャッター ・耐火クロススクリーン ・ドレンチャー |
・消防設備:消火器、スプリンクラーなど ・警報設備:火災報知器、携帯用拡声器など ・避難設備:避難はしご、救助袋など ・電気設備:自家発電設備、総合操作盤など ・その他:排煙設備、連結送水管など |
防火設備定期検査では、防火シャッターの駆動装置が正常に動作するか、ドレンチャーの貯水槽が劣化していないかや、水質・水量が適正かどうかなどを確認します。
防火設備に問題があると、人命の安全を確保できない、設備の不具合で二次被害が起こるなどのおそれがあるので、徹底して点検しなければいけません。
消防設備点検では、消化器や火災報知器、避難器具などが、緊急時に問題なく作動するかを確認します。
点検の対象となる設備は、消防設備、警報設備、避難設備、電気設備です。その他、排煙設備や連結散水設備も点検します。
報告制度
防火設備定期検査と消防設備点検の報告先は、以下のとおりです。
防火設備定期検査 | 消防設備点検 |
特定行政庁 | 消防長または消防署長 |
防火設備定期検査の報告先は、特定行政庁です。
報告書は1年に1回、検査をしてから一定期間のうちに提出しなければいけません。特定行政庁によって期間が異なるので、検査前に確認しておくとスムーズに提出できるでしょう。
消防設備点検の報告先は、消防長または消防署長です。
建物の関係者は、点検の結果を維持台帳に記録し、特定防火対象物の場合は1年に1回、その他の対象建築物の場合は3年に1回ごとに報告します。
防火設備定期検査と消防設備点検の違いについて
防火設備定期検査と消防設備点検は、どちらも「建築物の安全性の確保」を目的としており、定期的な点検と報告が義務付けられています。
ただし、根拠となる法律が異なるため、それぞれの検査の内容や対象建築物、点検者などに違いがあります。
両者の違いを理解しておくことは、建物の所有者や管理者にとって重要なことです。
また、あなたの所有する建物が定期検査の対象となる場合は、信頼できる業者に点検を依頼しましょう。
防火設備定期検査や消防設備点検をご希望の方は、「カメガイ防災設備」にご相談ください。
カメガイ防災設備には、専門資格を持つスタッフが在籍しており、年間点検数5,000件以上の豊富な実績があります。
防火設備定期検査、消防設備点検どちらも対応可能ですので、建物の定期検査をお考えの際は、ぜひカメガイ防災設備にお任せください。