ハロゲン化物消火設備とは?仕組み・設置基準などを解説
  • コラム
Date:2025/05/12

ハロゲン化物消火設備とは?仕組み・設置基準などを解説

ハロゲン化物消火設備は、火災時に迅速かつ効果的に消火するためのシステムです。ハロゲン化物消火剤を放出し、燃焼を抑制することで火を消し止めます。

水や泡を使用する消火設備と異なり、ハロゲン化物消火設備は消火後の汚損がほとんどなく、機器や貴重品への影響を最小限に抑えられるのが特徴です。そのため、電気機器やコンピュータールームなど、高価な機器が集中する場所に最適な設備とされています。

この記事では、ハロゲン化物消火設備とは何かや、仕組み、設置基準、費用相場について詳しく解説します。ハロゲン化物消火設備を導入しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

 

ハロゲン化物消火設備とは?

ハロゲン化物消火設備とは?

ハロゲン化物消火設備とは、ハロゲン化物ガスを使用して火災を素早く鎮火する消火システムです。燃焼の連鎖反応を抑制することで素早く鎮火し、酸素を奪わずに火を消せる特徴があります。

しかし、従来使用されていたハロン消火剤(ハロン1301・1211など)は、オゾン層破壊の原因となるため、現在では新規生産が禁止されており、ハロゲン化物消火設備は原則として廃止されています。

ただし、特定の用途(クリティカルユース)では、リサイクルされたハロン消火剤を使用したハロゲン化物消火設備の使用が認められています。

次に、ハロゲン化物消火設備の仕組みや安全性について見ていきます。

 

仕組み

ハロゲン化物消火設備は、火災の発生を感知するとハロゲン化物ガスを放出し、火炎と接触することで燃焼反応を停止させます。この方法により、酸素濃度を下げずに消火することが可能です。

多くのハロゲン化物消火設備は、火災検知システムと連携し、自動的に作動します。火災が発生すると制御装置が作動し、消火剤が放出されます。また、一部の設備では、非常ボタンや手動レバーを操作することで消火剤を放出することも可能です。

ハロゲン化物消火設備の放出方法には、以下の2種類があります。

全域放出方式:区画全体にガスを放出し、広範囲の火災を一度に消火

局所放出方式:特定の対象物にガスを放出し、限定的な火災を消火

どちらの方式を選ぶかは、設置する場所の特性や火災リスクに応じて決まります。火災時の被害を最小限に抑えるには、専門業者に相談し、最適な方式を選ぶことが重要です。

 

安全性について

ハロゲン化物消火設備は、酸素を奪わずに消火できるため、二酸化炭素(CO₂)消火設備のように窒息の危険が少ないという特徴があります。

ただし、一部の消火剤は高濃度で吸入すると神経系に影響を与える可能性や、燃焼時に有害ガス(フッ化水素など)が発生する場合があるため注意が必要です。

通常の使用環境では、消火剤の濃度は安全基準内に設定されており、適切な換気設備の設置によって人体への影響を最小限に抑えられます。また、作動後の排気設備によるガスの排出や、避難経路の確保など、安全な運用のための基準も定められています。

ハロゲン化物消火設備は、適切な基準のもとで設置・運用されることで、設備や人体への影響を最小限に抑えながら、安全かつ効果的な消火を実現できる設備です。

 

ハロゲン化物消火設備の設置基準

ハロゲン化物消火設備の設置基準

ハロゲン化物消火設備の設置基準は、消防法および関連法令に基づき、設置場所の用途やリスクに応じて厳格に定められています。

現在、ハロゲン化物消火設備の新規設置は原則禁止されていますが、特定の用途(クリティカルユース)では例外的に設置が認められています。

 

設置が認められる「クリティカルユース」の基準

ハロゲン化物消火設備は、以下の条件を満たす場合に設置が認められます。

<設置が認められる条件>

・水系・粉末系消火設備が使用できない環境

・可燃物の特性上、通常の消火剤が適用できない場合

・航空機・軍事設備など、即時消火が求められる環境

これらの用途では、ハロゲン化物消火設備の設置が認められ、消防庁や関係機関の許可を得て運用されます。

 

消防法に基づく設置基準

ハロゲン化物消火設備の設置基準は、消防法施行規則および関連する技術基準により定められています。具体的な基準の一例は、以下の通りです。

対象 設置基準
自動車の修理・整備に使用されている部分 地階・2階以上:200m²以上

1階:500m²以上

駐車に使われている部分 地階・2階以上:200m²以上

1階:500m²以上

屋上:300m²以上

昇降機つき駐車施設 収容車両数が10台以上
発電機・変圧器など電気設備がある部分 200m²以上
鍛造場、ボイラー室など多量の火気を使う部分 200m²以上
通信機器室 500m²以上
危険物政令別表第4で定める指定可燃物 指定量の1000倍以上を貯蔵または取り扱う場合

(参考:https://syoubous.com/a-secth/kharon.php

 

設置に関する技術基準

ハロゲン化物消火設備を安全に運用するため、以下の技術基準が設けられています。

・消火剤の放出濃度と速度は適正値に設定し、安全性を確保する。

・ホース接続口は、保護対象から20m以内に配置する。

・換気設備を設置し、有害ガスの排出対策を講じる。

・停電時でも作動可能な非常電源の確保が求められる。

このように、特定用途で設置が認められた場合でも、安全対策(換気設備、非常電源、消火剤濃度管理)が必須です。ハロゲン化物消火設備を導入する際には、消防法や環境規制を十分に理解し、慎重に検討しましょう。

 

ハロゲン化物消火設備工事の費用相場

ハロゲン化物消火設備工事の費用相場

ハロゲン化物消火設備の工事費用は、設置する場所の規模や使用する機器の種類、必要なシステム構成によって異なりますが、一般的な相場は、約250万円前後です。

工事費用には、システムの設計や設置工事、消火ガスの購入費用などが含まれます。初期投資は高めですが、長期的な火災防止や精密機器の保護を考えると、コストパフォーマンスの高い設備といえるでしょう。

また、設置後のメンテナンスや点検も必要です。配管やノズルの劣化、消火剤の充填不足があると、いざという時に正常に作動しないリスクがあります。

メンテナンスは、一般的に機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごとに行わなくてはなりません。定期的な費用が発生しますので、信頼できる専門業者への依頼がおすすめです。適切な施工と管理を行うことで、長期的な安全性が確保できます。

 

ハロゲン化物消火設備に関するご相談なら

ハロゲン化物消火設備に関するご相談なら

ハロゲン化物消火設備は、電気機器や精密機器を扱う施設など、水や粉末消火剤が使えない環境で有効な消火設備です。燃焼の連鎖反応を阻害し、短時間で火災を抑制できる一方で、設置には消防法の基準を満たす必要があり、新規設置は原則として制限されています。

また、安全な運用のためには、定期的な点検や適切なメンテナンスが欠かせません。消火剤の放出装置や配管の劣化を放置すると、火災時に作動しないリスクがあるため、専門業者による管理が重要です。

カメガイ防災設備株式会社では、消火設備の設計から設置、メンテナンスまで一貫して対応可能です。

施設の環境に適した消火設備の導入や、定期点検のご相談も承っております。

設備の導入を検討されている方や、既存設備の点検・維持管理をお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。

 

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