近年、観光需要の高まりとともに全国各地で民泊施設が増加しています。法整備も進み、個人や小規模事業者でも手軽に宿泊事業を始められるようになりました。
なお、民泊施設を運営する上では、関連法令の把握と適切な対応が極めて重要になります。今回の記事では、民泊施設の消防設備の必要性や、設置条件、かかる費用などを解説します。
民泊施設の運営を予定されている方や、消防設備について知りたい方はぜひ参考にしてください。
民泊施設に消防設備は必要?
民泊とは、個人で所有する住宅やマンションの一室などを宿泊施設として提供するサービスを指し、訪日観光客の増加や地域活性化の流れを受けて広がっています。運営にあたっては旅館業法の「簡易宿所営業」や住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)に基づいた対応が求められ、宿泊者が安心して利用できる環境整備が必要です。
中でも重要なのが火災への備えです。民泊は一般の住宅を活用するケースが多く、建築当初は不特定多数の宿泊者を想定していないこともあります。そのため、火災が発生した場合に迅速な避難や初期対応が可能となるよう、適切な消防設備を設置し、万が一のリスクに備えることが不可欠です。
民泊施設に必要な消防設備
それでは、民泊施設に必要な消防設備やその設置基準などを解説します。
自動火災報知設備
民泊施設では、火災を早期に感知し警報を発する自動火災報知設備の設置が求められます。小規模な建物では「特定小規模施設用自動火災報知設備(特小自火報)」が利用でき、無線式や電池式の感知器を組み合わせることで、配線工事を簡略化し、工期やコストを抑えられる点が大きなメリットです。
ただし、延べ面積が300㎡以上や3階建て以上の建物では、より高度な通常の自動火災報知設備が必要となり、消防設備士による専門的な設計・工事が必須です。設置後には作動試験や定期点検が義務付けられており、火災発生時に確実に作動する状態を維持し続けることが求められます。
消火器
初期消火のための消火器は、延べ面積が150㎡以上の場合、消防法により設置が義務付けられています。設置場所は各階から20m以内の範囲に1本以上となるよう配置し、火気を使用する部屋や出入口付近など、誰でもすぐに手に取れる位置に設置することが推奨されています。
また、設置する消火器は業務用タイプが望ましく、見やすい位置に標識を掲示することで、火災時に誰でも迷わず使用できます。消火器はホームセンターや専門業者で購入可能ですが、年1回の点検とおおむね10年ごとの交換を行い、常に使用できる状態を維持しなければなりません。
誘導灯
火災時の避難経路を示す誘導灯も重要な設備です。夜間や停電時には、視界が悪い中でも避難方向をしっかりと示し、宿泊者の安全な避難をサポートします。1階で直接外部に避難できる構造や、宿泊室から短距離で避難口に到達できる場合など、一定の条件を満たす建物では設置が免除されるケースがあります。
設置する際には、電気工事士や消防設備業者による専門的な工事が必須です。設置基準には高さや照度、点灯時間など細かい規定があり、それらを満たすことで初めて避難誘導の安全性が確保されます。
その他
建物の規模や構造によってスプリンクラー設備の設置が求められる場合があります。特に延べ面積が大きい施設や複数階にわたる宿泊室を有する場合は、火災時に自動的に散水し、初期消火を行うスプリンクラーの導入が安全確保の面で重要です。
また、カーテンやじゅうたん、寝具などの内装材には防炎物品を使用する必要もあります。防炎性能を有する資材を採用することで、火災時に火の回りを遅らせ、宿泊者の安全な避難と迅速な消火活動の実施が可能になります。
参考:
民泊における消防用設備の設置について
民泊を始めるにあたって
民泊施設の消防設備設置にかかる費用
民泊施設で必要となる消防設備の設置費用は、建物の広さや階数、設置する設備の種類によって変わります。以下は一般的な目安です。
自動火災報知設備(特小自火報)
小規模な民泊向けの無線式・電池式タイプで10〜50万円程度。通常の有線式や規模が大きい施設では50〜100万円以上になることもあります。
消火器
1本あたり5,000〜15,000円程度が目安。設置本数は建物の階数や延べ面積で決まります。
誘導灯
1台あたり3~5万円程度で、配線工事費込みで10万円前後かかることもあります。
スプリンクラー設備
数十万~数百万円規模の費用がかかることもあります。
それらの費用に加え、設置後は定期点検費用や更新費用も発生します。具体的な金額は事前に複数の業者へ見積もりを依頼し、比較することが重要です。
民泊施設に消防設備を設置する際の流れ
①必要な消防設備を確認する
まずは消防法令における用途や建物の構造を確認し、どの消防設備が必要かを明確にします。
②消防設備の図面を作成する
建物の平面図を用意し、設置予定の消防設備の位置や種類を明示した図面を作成します。
③消防署に事前相談を行う
作成した図面を持参し、管轄の消防署で事前相談を行います。設備の種類や設置方法、工事の進め方について確認できます。
④消防設備の設置工事
相談内容に基づき、消防設備士や専門業者が実際の設置工事を行います。
⑤設置後の試験
工事が完了したら、消防設備が正しく作動するか試験を行い、作動確認をします。
⑥設置届の提出
最後に、設置した消防設備について設置届を管轄消防署に提出し、手続きが完了します。
民泊施設の消防設備に関するご相談なら
民泊施設における消防設備の整備は、法令遵守という観点においても欠かせないことです。自動火災報知設備や消火器、誘導灯などは法令に基づき設置が求められます。適切な設備の選定や設置工事を進めるためには、事前に管轄の消防署や専門業者と相談しながら進めることが大切です。
なお、民泊施設の消防設備の設置・点検に関するお悩みがございましたら、ぜひカメガイ防災設備にご相談ください。名古屋市を中心に、小牧市、江南市、一宮市、春日井市、扶桑町、大口町など幅広い地域でサービスを展開しており、建物の規模や用途に合わせたご提案が可能です。
消防設備の設置の必要性や費用の見積もり、手続きに関する疑問などにも丁寧にお応えしておりますので、お悩みがございましたらお気軽にお問い合わせください。