民泊運営において消防法上求められる対応や手続きについて解説
  • コラム
Date:2025/11/14

民泊運営において消防法上求められる対応や手続きについて解説

民泊を運営する際には、宿泊者の安全を守るために消防法上の基準を満たすことが欠かせません。対応を怠ると、運営許可が下りないだけでなく、罰則の対象になる可能性もあります。

今回の記事では、民泊運営において消防法上どのような対応や手続きが必要になるのかを解説します。民泊を始めようと考えている方や、すでに運営中で安全面を見直したい方は、ぜひ参考にしてください。

民泊と消防法の関係

民泊とは、住宅の一部または全部を宿泊施設として旅行者などに貸し出す仕組みで、旅館業法に基づく「簡易宿所営業」または住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)に基づく「住宅宿泊事業」として運営されます。

それらの事業を行う際には、宿泊者の安全を確保するため、消防法に定められた防火・防災基準を満たすことが求められます。

具体的には、火災報知器や消火器、避難誘導灯などの設置が必要であり、建物の構造や宿泊人数によって必要な設備や申請内容が変わります。消防法上の基準を満たしていないと、許可や届出が受理されないだけでなく、営業停止や罰則の対象となる可能性もあります。

消防法に違反した場合のリスク・罰則

消防法に違反した場合、営業停止や届出の取り消しなどの行政処分を受ける可能性があります。消防設備の未設置や点検不備、防火管理者未選任などが確認されると、30万円以下の罰金が科されることもあります。

さらに、是正命令に従わない場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられることもあり、重大な火災事故を起こした際には刑事責任を問われる場合もあるでしょう。

民泊運営において消防法上求められる対応

民泊運営において消防法上求められる対応

主な対応として、住宅用火災警報器(寝室や階段上部への設置が基本)や、特定小規模施設用自動火災報知設備、消火器、避難口誘導灯・階段通路誘導灯の設置が挙げられます。

主な消防設備とその基準

自動火災報知設備
火災を早期に感知し警報を発するための自動火災報知設備の設置が求められます。小規模施設では「特定小規模施設用自動火災報知設備(特小自火報)」が使用可能で、無線式・電池式の感知器により配線工事を簡略化できます。延べ面積300㎡以上や3階建て以上の建物では、通常の自動火災報知設備が必要です。設置後は作動試験・定期点検を実施し、常に作動する状態を維持する必要があります。

消火器
延べ面積が150㎡以上の建物では消火器の設置が義務付けられています。各階から20m以内の範囲に1本以上設置し、出入口や火気使用場所の近くに配置するのが基本です。業務用タイプを使用し、年1回の点検・約10年ごとに交換を行う必要があります。

誘導灯
火災時に避難方向を示す誘導灯は、夜間や停電時に重要な役割を果たします。構造上、避難経路が明確な建物では免除されることもありますが、設置する場合は、高さ・照度・点灯時間などの基準を満たすことが求められます。

その他(スプリンクラー・防炎物品など)
規模の大きな施設や複数階に宿泊室を持つ建物では、スプリンクラー設備の設置が求められる場合があります。また、防炎物品(防炎カーテン・防炎カーペットなど)を使用することも義務づけられており、火災拡大を防ぐうえで重要です。

消防用設備を設置する際は、消防設備士による施工が必要なケースもあります。その場合には工事前に「工事整備対象設備等着工届出書」を10日前までに提出し、工事完了後4日以内に「消防用設備等設置届出書」を提出します。

電気配線を伴う設備(誘導灯・自動火災報知設備など)の施工は、電気工事士が行う必要があります。

消防法令適合通知書について

建物が消防法令に適合していることを証明する書類であり、宿泊者の安全を確保するために不可欠なものです。住宅宿泊事業法施行要領(平成29年12月26日付 生食発1226第2号ほか)において、住宅宿泊事業の届出時にはこの通知書の提出が求められています。

「届出住宅が消防法令に適合していることを担保し、適正な運営を確保する目的から、消防法令適合通知書を届出時にあわせて提出することを求めるものとする」と明記されています。

交付の流れは以下の通りです。

①申請書の提出
所定の申請書と必要書類(図面など)を添えて管轄消防署へ提出。

②消防法令適合状況の調査
消防署が立入検査を行い、設備や構造が基準に適合しているか確認。

③通知書の交付
適合が確認された場合、「消防法令適合通知書」が交付されます。

加えて、建物の収容人員が30人以上の場合は「防火管理者選任届出書」および「消防計画作成届出書」の提出が必要です。さらに、市町村の火災予防条例により「防火対象物使用開始届出書」の提出が求められる場合もあります。

参考:民泊における消防法令上の取扱い等について

民泊を始めるにあたって

民泊運営におけるその他注意点

民泊運営におけるその他注意点

民泊運営では、消防設備の設置や届出だけでなく、防火安全対策の維持管理や宿泊者への周知も重要です。まず、建物の構造や宿泊スペースに応じた避難経路図を作成し、玄関や居室内など見やすい場所に掲示しておくことが大切です。火災時の行動手順や緊急時の連絡先などを明示することで、宿泊者が適切に避難行動を取れるようになります。

また、消火器の使用方法や火気器具の取り扱い注意事項を明記し、喫煙場所や灰皿の取り扱いルールを設けるといったことも検討したほうが良いです。出火原因の多くは「コンロ」「ストーブ」「たばこ」であるため、それらの火気使用器具に関しては特に注意喚起を行いましょう。

それらを徹底することで、宿泊者の安全を守り、火災リスクを最小限に抑えた安心・安全な民泊運営を実現できます。

民泊施設の消防設備に関するご相談なら

民泊の運営では、法令に基づいた消防設備の設置や維持管理が欠かせません。安全性を確保するためにも、専門業者への相談・点検を早めに行うことが大切です。

カメガイ防災設備では、名古屋市を中心に小牧市・江南市・一宮市・春日井市・扶桑町・大口町など幅広い地域で、民泊施設の消防設備の設置・点検・改修に対応しています。建物の構造や用途に合わせた最適な設備提案から、消防署への届出のサポートまで一貫して対応可能です。

費用や手続きに関する疑問にも丁寧にお答えしておりますので、ご興味やご相談等ございましたらお気軽にお問い合わせください。