火災のリスクを最小限に抑えるためには、建物や施設の用途・環境に応じた適切な消火設備を備えることが欠かせません。
今回の記事では、消火設備の一つである「粉末消火設備」に焦点を当て、粉末消火設備とは何かをはじめ、種類、設置基準、費用などについて解説します。消防設備の導入や見直しを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
粉末消火設備とは?
粉末消火設備とは、火災発生時に粉末状の消火薬剤を高圧ガスなどの力で噴射し、火炎を覆って燃焼を抑える消火設備です。粉末が可燃物を覆うことで酸素の供給を遮断し、燃焼反応を停止させる仕組みになっています。
代表的な設置場所としては、立体駐車場や機械式駐車場などの車両火災対策を目的とした施設が挙げられます。車両火災は短時間で拡大しやすいため、迅速に放射できる粉末消火設備が効果的です。また、化学工場・倉庫・ガソリンスタンド・ボイラー室など、危険物を扱う施設でも多く採用されています。
ガス系や水系の消火設備に比べて即効性が高く、設置コストを比較的抑えられることから、化学工場・倉庫・ガソリンスタンド・ボイラー室など、危険物を扱う施設で採用されることが多いです。湿気や寒冷の影響を受けにくく、広範囲を一気に消火できる点も特徴です。
消火薬剤の種類
粉末消火設備で使用される薬剤は、「第1種粉末」から「第4種粉末」までの4種類に分類されます。
第1種粉末(炭酸水素ナトリウム)
油火災(B火災)や電気火災(C火災)に対応。白色の粉末で、連鎖反応を抑制し冷却効果もあります。
第2種粉末(炭酸水素カリウム)
第1種より消火効果が高く、主に油・電気火災向け。紫色の粉末が特徴です。
第3種粉末(リン酸アンモニウム)
普通火災(A火災)にも対応。被覆効果があり、再燃防止にも優れます。淡紅色の粉末が多く、最も汎用的なタイプです。
第4種粉末(金属火災用)
油・電気・ガス火災など幅広く対応でき、灰色の粉末が特徴です。
薬剤は、施設の用途や想定される火災の種類に応じて、最適な粉末を選定することが求められます。
粉末消火設備の種類

粉末消火設備は主に「固定式」と「移動式」に分けられます。
固定式
特定の対象物に対してあらかじめ設置されたノズルから自動または手動で粉末消火薬剤を放出するタイプです。主に危険物施設や工場、タンク周辺などで使用され、火災発生時に迅速かつ効果的に初期消火を行うことができます。
放出方式にいくつかの種類があり、全域放出方式では、建物や区画全体に設けたノズルから粉末を放出し、閉鎖された空間全体を一気に消火できます。局所放出方式には、上部から粉末を放出するオーバーヘッド方式と、側面から水平方向に放出するタンクサイド方式があり、対象物の構造などに応じて選択されます。
また、手動または遠隔操作でノズルの向きを変え、特定箇所に集中的に粉末を噴射できるモニターノズル方式もあります。
移動式
キャスター付きの容器に粉末薬剤を充填し、ホースとノズルで噴射するタイプです。大型消火器のように使えるタイプもあり、広い倉庫や屋外施設、空港など、火災の発生場所が限定されない環境に最適です。
固定式と違って設置工事が不要で、火災発生時に人が現場へ持ち運んで使用します。放射時間や射程距離が長いものも多く、大規模火災の初期対応にも有効です。定期的な薬剤の補充や交換、圧力点検が必要ですが、取り扱いが簡便なため、様々な現場で活用されています。
粉末消火設備の設置基準

粉末消火設備の設置基準は、消防法施行規則第32条の9およびその細目である「粉末消火設備の基準(消防庁告示)」により定められています。
設置に際しては、方式、防護区画の体積、開口部の有無、貯蔵・取扱う危険物の種類などを考慮して必要な消火剤量や噴射ヘッドの配置が決定されます。
全域放出方式では、防護区画の全域に均一に粉末が行き渡るように設計し、噴射ヘッドの放射圧力は1kgf/cm²以上が必要とされています。
局所放出方式では、防護対象物の全ての表面が噴射ヘッドの有効射程内に収まるように設置することが求められます。
さらに、消火剤の量は防護区画1m³あたりの必要量として、以下のように定められています。
第一種粉末:0.60kg/m³
第二種・第三種粉末:0.36kg/m³
第四種粉末:0.24kg/m³
これに加え、開口部がある場合は開口面積1m²あたりの補正量を加算し、危険物の種類に応じた係数を掛けて最終的な必要薬剤量を算出します。
参考:粉末消火設備の基準
粉末消火設備の価格・費用相場

粉末消火設備の方式別の価格・費用相場は以下の通りです。
移動式
設置工事を含めた一般的な価格帯は、1台あたり約15万円〜25万円程度です。小規模な倉庫や駐車場、危険物取扱所など、必要な場所へ持ち運んで使用できるため、導入コストを抑えたい現場にも適しています。
固定式
局所放出方式は、比較的コンパクトな設計が多く、数十万円程度で設置できるケースもあります。一方、全域放出方式では、薬剤量・ノズル数・配管・制御盤などが大規模になるため、100万円〜数百万円規模に達することも珍しくありません。特に工場や立体駐車場などの広範囲施設では、構造や防護区画の条件によって費用が大きく変動します。
実際に見積もりを取る際は、仕様・薬剤の種類・対象エリアの体積・工事範囲を明確にした上で、複数社の見積もりを比較検討することが重要です。
粉末消火設備に関するご相談なら
駐車場や工場、危険物施設など幅広い現場で採用されている粉末消火設備は、施設の用途や構造に合わせて、最適なタイプを選定することが重要です。
なお、粉末消火設備をはじめ、各種消火設備に関するご相談は、ぜひ カメガイ防災設備株式会社へお問い合わせください。
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